インディビジュアルコンテンツの代表の本藤(ほんどう)です。
今回は「スマイルカーブから見た中小企業の事業転換」というテーマでお話しします。
2018年10月16日(執筆時前日)の日本経済新聞に「後継者難の中小の情報、外資に開放 廃業防止へ経産省 」という記事が載りました。
タイトルのとおり、中小企業の事業承継を進めるため、海外にデータ開放するという内容の記事です。まるで、「後継者難の中小企業は売れ残ったクリスマスケーキ」と言わんばかりです。まったく開いた口が塞がらない思いです。
次回、事業承継を採り上げますが、その前に、このテーマに触れておきたい思います。事業承継を考える上でも、参考になるでしょう。
1.スマイルカーブとは
さて、「スマイルカーブ」とは何でしょうか。下図のとおり、川上、川下に比べて、川中(製造・組立)の付加価値が低くなる現象のことです。
川中の付加価値が低くなる理由は主に二つ、一つは「技術の進歩」、もう一つは「新興国への生産シフト」です。
組立や製造工程は、人手から機械に置き換わると技術移転が容易になります。企業間で競争原理が働くと、生産技術によって生み出された付加価値は、容易に価格転嫁されてしまいます。これが「技術進歩」が付加価値を下げる理由です。
「新興国への生産シフト」ですが、労働集約的な作業が工賃の安い新興国へシフトすることが原因です。
スマイルカーブの反対は「アングリーカーブ」と呼ばれます。
スマイルカーブとは逆で「製造・組立」の付加価値が、最も高くなる状態を表します。
「アングリーカーブ」は、新興国にしか起こらない現象です。新興国は、川上や川下で付加価値を生み出す力がついておらず、川中で付加価値を生み出すしかないのです。
先進国になるためには、必ず「工業化」を通ります。
日本の高度成長期も「アングリーカーブ」の元でもたらさたのです。
2.中小企業の事業転換の方向
「スマイルカーブ」は、そっくりそのまま、企業の事業構造にあてはめることができます。
「川上・川中・川下」を「開発・製造・販売」と読み替えればよいのです。
お気づきと思いますが、多くの中小企業は、依然として「アングリーカーブ」型の事業構造のままなのです。
中小企業の事業転換の方向性は、「スマイルカーブ」をもとに考えることができます。
それは、川上や川下に事業をシフトするか、川中の技術力を引き上げるか、いずれかです。これをまとめたものが下図です。
①は、日本の電機メーカーが、川上分野の機能・技術力を高め、付加価値の高い製品を生み出そうとしたことが、記憶に新しいと思います。「ガラパゴス化」と揶揄されました。
日本がデフレの真っ只中だったことや、購買意欲の高い中国やアジア地域が、日本製品を買い求める所得水準に達していなかったこと等が、うまくいかなかった要因ですが、選択肢としては存在します。
②は、他の追随を許さないレベルまで専門性を高め、川中で生き続ける選択肢です。
③は、前回まで「下請中小企業が自社ブランドを構築する方法」として述べてきましたので、参考にしてください。
どの方向に進むにしても、未知の分野が存在し、新しい知識や経験、新しいものの見方が必要になります。事業承継は、まさに今後の事業展開を見直すよい機会です。
これまで日本経済を支えてきた日本の中小企業を、安易に外資に承継させることに、個人的には反対です。ただ、企業を存続させるために、企業自身が変わっていかなければならないことは確かです。
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